アートな人紹介:木戸永ニさん
綺麗な石が落ちていれば拾ってまじまじ見たくなるし、葉っぱを見れば触って厚みを確かめたくなる。子どもの頃から、見る・触るということに強い関心を持っていたと思います。その好奇心でもって身近なものと関わることが自分にとっての芸術でした。「この色を混ぜるとこうなるんだ」、「こう動くとこういう形になるんだ」という発見の連続で今の自分の絵ができていると思います。世界って不思議だなと気づいたことが美術に興味を持ったきっかけだと思います。
木や岩などの自然物を自分の作品のモチーフにして絵を描くことが多いですが、そんなに特別では無くても身近な自然物に十二分に魅力があることに気づけましたし、そこに気付くと特別な物の特別さがより味わえる、という気がします。
人と違ってもいいんだという「受け入れる力」と、自分と他人はこう違うんだということを比べて明らかにする「自分を見つめなおす力」を同時に育てられるのが魅力だと思います。しかもそれが作るという楽しさの中でできる。いくら意義のあるものでも楽しくなければできないと思います。
美術が無ければ、自分を見つめなおした結果ただ自己嫌悪に陥る人になっていたかもしれない。あるいは客観的な視点が無いまま自分を許し続けてただわがままな人になっていたかもしれない。美術のおかげでそういう事態を避けることができたのかなと思います。少しはましに生きられているのかも。
見たいものや触って確かめたいものがまだまだたくさんあります。頭の中ではできているけどまだ試せていない技法や描き方もどんどん試していきたいです。色んな植物、変わった形の岩、遺跡や納屋などももっと見に行きたいです。特に最近は植物ならサワグルミ、遺跡でいうとストーンサークルに興味があります。今後も自分の絵は変わっていくと思います。スタイルの変化に合わせて「エド・キーツ」という別名義の作品を発表することも始めましたが、もしかしたら名義も今後増えるかも。
自分の作品制作と並行して美術・造形の楽しさを伝える活動もしていきたいです。短大の講師として学生たちに授業をしていますが、それ以外にも幼児・小学生対象の教室やイベントにも力を入れたいです。「目と手でおもしろい」を合言葉に『造形教室めてお』と名付けた活動を2024年からスタートしました。子ども達の作品にも非常に興味をそそられますが、作品化することよりも体験自体を重視した活動にしたいです。この活動を通して参加者が、自分の子どもの時のように「世界って不思議で面白いな」と感じてくれたら嬉しいです。
木戸 永二 きど えいじ
1983年、青森市出身。
画家、青森中央短期大学幼児保育学科講師。東北、北海道を中心に日本国内外で作品を発表している。
アクリル絵具やペン、彫刻刀などによるドローイング主体の絵画作品を制作している。モチーフとしては植物(リンゴの樹やブナなど)や岩が多い。
別名義「エド・キーツ」としても絵画作品を発表している。こちらではマスクのおじさんやサボテン、日用品などのモチーフが多い。